「ステロイドは怖い薬ですよね?」
皮膚科の診察をしていると、このような言葉を患者さんから聞くことがよくあります。
インターネットやSNSなどの影響もあり、
「ステロイド=副作用が強く危険な薬」
というイメージを持っている方も少なくありません。
しかし実際には、ステロイド外用薬は皮膚科治療において最も重要で基本的な薬の一つです。正しく使用すれば高い効果が期待でき、安全性も長年の臨床経験によって確認されています。
むしろステロイドを怖がりすぎて
・必要な量を塗らない
- ・症状が少し良くなるとすぐにやめる
といった使い方をしてしまうと、炎症が長引き、結果として治療期間が長くなることがあります。
この記事では皮膚科専門医の立場から
・ステロイド外用薬とはどんな薬か
・副作用の正しい理解
・正しい塗り方
・ステロイドのやめ方
・よくある誤解
- ・患者さんからよくある質問
についてわかりやすく解説します。
ステロイド外用薬とは?
ステロイド外用薬は正式には
副腎皮質ステロイド外用薬
と呼ばれる薬です。
これは体の中で作られるホルモン(コルチゾール)をもとに作られた薬で、強い抗炎症作用があります。
- 主な作用は次の通りです。
・炎症を抑える
・かゆみを抑える
- ・赤みや腫れを改善する
皮膚科では以下のような多くの皮膚疾患で使用されています。
・アトピー性皮膚炎
・湿疹
・接触皮膚炎(かぶれ)
・虫刺され
・手湿疹
- ・乾燥性皮膚炎
つまり、ステロイド外用薬は皮膚の炎症を抑える基本的な治療薬といえます。
なぜステロイドは「怖い薬」と思われているのか
ステロイドに対する不安は、主に以下のような情報から生まれています。
・副作用が強い
・一度使うとやめられない
・皮膚が薄くなる
- ・体に吸収されて危険
確かに、不適切な使い方をすれば副作用が起こる可能性はあります。
しかし
医師の指示通りに使用した場合、重大な副作用が起こることは非常にまれです。
問題になることが多いのは、むしろ
ステロイドを怖がりすぎて適切な治療ができないこと
です。
ステロイド恐怖症(ステロイドフォビア)とは
皮膚科の分野では
「ステロイド恐怖症(Steroid Phobia)」
という言葉があります。
これは
ステロイドに対する過度な不安や誤解
を指します。
研究によると、アトピー性皮膚炎の患者さんの半数以上がステロイドに不安を感じているとも報告されています。
ステロイド恐怖症があると
・薬をほとんど塗らない
・すぐに中止する
- ・市販薬だけで我慢する
といった行動につながり、結果として
症状の慢性化や悪化
につながることがあります。
ステロイドを怖がりすぎると症状が悪化することも
皮膚の炎症は
早く・しっかり抑えること
が大切です。
しかしステロイドを怖がり
・少量しか塗らない
- ・途中でやめる
といった使い方をすると、炎症が完全に治らず、
慢性的に再発を繰り返す状態
になることがあります。
結果として
・治療期間が長くなる
- ・強い薬が必要になる
という悪循環に陥ることもあります。
ステロイド外用薬の強さの違い
ステロイド外用薬は効果の強さによって5段階に分類されています。
Ⅰ群:最強(ストロンゲスト)
Ⅱ群:非常に強い(ベリーストロング)
Ⅲ群:強い(ストロング)
Ⅳ群:普通(ミディアム)
Ⅴ群:弱い(ウィーク)
症状や塗る部位によって適切な強さを選びます。
例えば
顔 → 弱め
手足 → 強め
など、皮膚の厚さによって使い分けます。
ステロイド外用薬の正しい塗り方
ステロイド外用薬を効果的に使うためには、適切な量を塗ることが重要です。
その目安として使われるのが
1FTU(フィンガーチップユニット)
です。
これは
人差し指の第一関節までチューブから出した量
を指し、この量で手のひら2枚分に塗ることができます。
外来では、多くの患者さんがこの量よりも少なく塗っていることがよくあります。
適切な量を塗ることで
・炎症を早く抑える
- ・治療期間を短縮する
ことが期待できます。
ステロイド外用薬の副作用
ステロイド外用薬の副作用として知られているものには次のようなものがあります。
皮膚萎縮
皮膚が薄くなる状態です。
強いステロイドを長期間使用した場合に起こることがあります。
毛細血管拡張
皮膚の血管が目立つ状態です。
ニキビ様皮疹
顔に強いステロイドを長期間使用した場合などに起こることがあります。
ただしこれらの副作用の多くは
長期間の不適切な使用
によるものです。
皮膚科医の指示のもとで使用する場合、過度に心配する必要はありません。
ステロイドのやめ方
症状が良くなってくると、
「もう治ったから塗るのをやめてもいいですか?」
と聞かれることがあります。
しかし、炎症が完全に落ち着く前に急にやめると、
再び症状が悪化する(リバウンド)
ことがあります。
そのため、皮膚科ではよく以下のような方法をとります。
徐々に回数を減らす
例
1週間ごとに、1日2回 → 1日1回 → 2日に1回 → 中止 と減らしていきます。
弱いステロイドに変更
強い薬から弱い薬へ段階的に変更します。
保湿剤へ移行
炎症が落ち着いたら保湿中心の治療へ移行します。
このように段階的に減らしていくことが重要です。
よくある誤解
ステロイドについては様々な誤解があります。
誤解① ステロイドは危険な薬
正しく使用すれば安全性の高い薬です。
誤解② 一度使うとやめられない
依存性はありません。
誤解③ 子どもには使えない
適切な強さを選べば安全に使用できます。
よくある質問(Q&A)

Q. ステロイドはクセになりますか?
A. 基本的に「依存性」はありません。
ただし炎症が残っている状態でやめると症状が再燃するため、「やめられない」と感じることがあります。
これは薬の依存ではなく、皮膚の炎症がまだ治っていないことが原因です。
Q. 子どもに使っても大丈夫?
A. 医師の指示のもとであれば安全に使用できます。
むしろ、炎症を長く放置するほうが
・皮膚のバリア機能低下
・かゆみによる睡眠障害
などの問題が起こる可能性があります。
小児では皮膚が薄いため、適切な強さの薬を選ぶことが重要です。
Q. 顔に塗っても大丈夫?
A. 顔にも使用できますが、
顔は皮膚が薄いため弱めのステロイドを使用することが多い
です。
自己判断で強いステロイドを長期間使用するのは避けましょう。
Q. 市販のステロイドは使ってもいい?
A. 市販薬にもステロイドが含まれているものがありますが、
-
・強さが分かりにくい
-
・適応が自己判断になる
という問題があります。
症状が長引く場合や広範囲の場合は、皮膚科を受診することをおすすめします。
まとめ
ステロイド外用薬は皮膚科治療において非常に重要な薬です。
正しい知識を持ち、適切に使用すれば安全で効果的な治療が可能です。
皮膚の炎症を早く適切に治療することは、症状の慢性化を防ぐうえでも大切です。
ステロイド外用薬について不安がある方は、ぜひ皮膚科で相談してみてください。
監修医師紹介
院長
花岡 佑真
経歴
- 2005年智辯学園和歌山中学校・高等学校 卒業
- 2011年大阪大学医学部 卒業、関西労災病院 初期研修医
- 2013年関西労災病院 皮膚科
- 2015年大阪みなと中央病院 形成外科
- 2016年大阪大学大学院医学系研究科皮膚科 特任研究員(形成外科診療にも従事)、大阪国際がんセンター 腫瘍皮膚科
- 2018年大阪大学大学院医学系研究科皮膚科 特任助教
- 2020年大阪大学大学院医学系研究科皮膚科 病棟医長
- 2021年10月千里皮膚科 開院
資格・所属学会
- 日本専門医機構認定皮膚科専門医
- 難病指定医
- 日本皮膚科学会所属
- 日本形成外科学会所属
- 日本皮膚外科学会所属
- 日本皮膚悪性腫瘍学会所属
- 日本美容皮膚科学会所属




